「地域創生は現場から」西予シルク工場で目の当たりにした、産業変革の瞬間

ふるさとプロデューサー育成支援事業の一環で、今週はほとんど愛媛県にいました。高校生までの青春時代を過ごした町、今治で、まさか仕事をする日が来るとは思いもよらず、なんとも不思議な時間を過ごしています。

そんな生まれ故郷から、高速に乗って車で約1時間半。愛媛県の南部(南予地域)に広がる広大な「西予市」が、いま熱い。第一弾として養蚕業の現場を視察する機会がありましたので、今日はその様子をレポートしたいと思います。

日本のシルク産業について

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私達の生活に身近な「シルク(絹)」。着物からハンカチ、バスローブなど、いたるところで見かけることができます。

シルクは蚕が成虫になる課程で作られる「繭」を原料としており、生糸にして、これをさらに加工することで艷やかな質感をもつ高級な繊維になります。その歴史は古く、日本では弥生時代から、既に養蚕業が行われていたという記述が残っています。

明治時代に至り、養蚕は隆盛期を迎え、良質の生糸は大量に海外へ輸出されていました。養蚕業は「外貨獲得産業」として重視され、日本の近代化の礎を築いたと言えます。

しかし時代は流れ、農業人口の減少や、絹の代替品としてナイロンなどの安く耐久性の高い科学繊維が生み出されたことにより、養蚕業は衰退の一途を辿っています。今では、中国やブラジルといった輸入にほぼ支えられるようになり、国内で稼働している製糸工場はたったの4箇所という状況になっています。

国内に残る4つの製糸工場のうちの一つが、西予市に

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そんな訳で、今では大変貴重な国産シルクですが、愛媛県では西予市の「野村シルク博物館」に隣接する工場で、西日本で唯一稼働を続けています。

見渡す限りに自然、山、緑に囲まれ、とても気持ちのよい環境。どんな場所かご覧になりたい方は、ぜひこちらの動画もチェックしてみてください。

昭和初期、西予市には養蚕業者が1,800軒もありました。しかし、上記でも触れたとおり海外の安価なシルクの輸入や化学繊維の台頭により後継者が育たず、その数は今や激減。今では、たったの8軒を残すのみとなっており、生産者の平均年齢も70歳代と、かつての勢いは失われつつあります。

苦境の中、希望を捨てない住民の皆さん

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そんな産業衰退に直面すると、町全体が暗く、どんよりしたムードに包まれているかというと…全くそんなことはありません!

リバースプロジェクトでブランドを展開している「SILMORE」もそうですが、今、希少な国産シルクの可能性にスポットライトが当たり、県内外から地域おこし協力隊や、シルク製品の開発メーカーが足を運んでいます。

聞いた話では、西予市は愛媛県内でも最も地方創生に力を入れている地域の一つだとか。市役所や、市長の言葉からも、その熱意を感じることができます。

後日、また当ブログでもご紹介しますが、日本各地で開催されているサイボウズ協賛の「地域クラウド交流会」でも、やはり愛媛の老若男女があつまり、新しいものを生み出そうという熱気で溢れかえっていました。

製糸工場に潜入!

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皆さんは、蚕・繭の匂いを書いだことがあるでしょうか?私は今回の訪問で初めて体験しました。工場敷地内に入ると、まさに「生」という、現場のリアルを感じ取ることができます。

製糸は、近代化の課程で機械が発達しており、通常は高速に繭から糸を引き、これをより合わせる作業が「全自動化」されています。強く糸を引っ張りながら紡ぐため、均一な太さで節もなく、大量に長い生糸を生み出せるようになっているとのことです。

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一方、この野村シルク博物館で作られている生糸・伊予生糸(いよいと)は「生引き」という、水分を多く含んだまま、ゆっくりと生成される方式を採用しています。手作業も発生してしまいますし、生産する能力は全自動の機械式に比べると多くはありません。

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しかし、時間と手間暇をかけて作られているが故に、通常のシルクに比べるとふんわりと柔らかく、その光沢は全く他と異なります。質の高さは高く評価され、京都の西陣織など高級着物店からの指名買いにより、欲しくても手に入らないというのが現状とのことでした。

まとめ

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現場では発見ばかり。足を使って、人々と対面して、初めてその様子を語ることができるようになります。

地域産品を磨き、ブランドを作り、商品を世に広める。言葉にすると簡単ですが、その第一歩である「素材」ひとつとっても、そこに息づく生産者や職人の声を聞いて、これをその後のプロセスに反映させなければ、きっと深いストーリーは生まれないことでしょう。

ストーリーが無ければ、どんな消費者にも商品の良さは伝わらず、結局は作り手のエゴ・自己満足になってしまいます。そうならないためにも、基礎中の基礎として、僕たちは何をしなければ行けないか。そこに気づくことができた、大変有意義な視察となりました。もちろん、今回行って満足、ではありません。これからも、何度も足繁く現場に伺おうと思います。

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